元Deafheaven、現在Whirrで活躍中のNick Bassettさん率いるフィラデルフィアのシューゲイザーバンドNothingの2014年の新作。Nickさんはこれ以外に
Nostalgistで、ギターボーカルのBrandonさんは
Swan Dive、
Death Of Loversで活動している模様。
前作
「Downwards Years To Come」 は先鋭的で凶悪なハードコアレーベルA389からのリリースでしたが、今作はなんと天下のメタルレーベルRelapseからのリリースです!
ポストメタルの流れから出てきたバンドだけにズッシリとした重量級のシューゲイザーではあるものの、灰色のトーンで統一された音のイメージはむしろ繊細で空虚。ぽっかりと胸に開いてしまった空洞を埋めるかの如き穏やかな歌声と暖かいメロディーには安らぎを感じると同時に、それらが抜け落ちていくような悲しみも孕んでいるのがこのバンドの最大の強みでしょう。
アルバムの構成はEPと比べてパンクっぽい曲やポストロックばりに壮大な展開をみせる曲と多彩ですが、曲のクオリティーは軒並み高く最後まで一気に聴かせます。オルタナティブロック的な強弱が付けられているので90年代はイギリスよりもアメリカのロックの方が好きという人にもいけるんじゃないかと。
このアルバムを聴いて癒されるか喪失感に浸るかは聴き手次第ですが、パンクやメタルを根っこに持ちつつマイブラやスロウダイブといった先達からの分かり易い影響を感じさせずにここまで想像力をかきたてるシューゲイザーは後にも先にも無かったと思います。
個人的にも期待していた以上の感動の1枚。今年のベストアルバムであります。
bandcamp